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美少女は保護られる〜私の幼なじみはちょっと変〜

第9章 君は変な王子様



「たこ焼き食べよっかー」

ニッコリ微笑むひぃくん。

私の質問はドスルーですか……?

ニコニコと微笑むひぃくんに手を引かれてやって来たのは、教室の奥にあるたこ焼き屋の出店。

いい匂い……。

匂いにつられてお腹を鳴らした私は、お兄ちゃんの事はたこ焼き食べてから探そう、そんな風に思う。

「ーーなんでお前らがいるんだよ」

お兄ちゃんの声に慌てて周りを見回す。

あれ……?
今確かにお兄ちゃんの声がしたのに。

姿の見えないお兄ちゃんを不思議に思いながらも、私は目の前で焼かれるたこ焼きを見つめた。

「美味しそうだねー花音」
「うん、お腹空いた」

たこ焼きをジッと見つめる私を見て、ひぃくんは隣でクスクスと笑う。

「ーーおい、シカトするな」

ーーー!?

やっぱりお兄ちゃんの声がする。
え……。
……どこ?

周りを見回してもお兄ちゃんらしき人はいない。

「幻聴が聞こえる……」

ポツリと小さく呟く。

ーーー!?

「……痛っ!」

いきなり知らない女の人にうちわの角で叩かれた私。

酷い……。
私が何したって言うの。

「花音、大丈夫?」

涙目で頭をおさえる私を、心配そうに覗き込むひぃくん。

今日は厄日だ。
いくら元からポンコツとはいえ、こんなに頭ばかり打ったらバカになってしまう。

「翔《かける》酷いよー。花音痛がってる」

……ひぃくん違うよ、私を叩いたのはお兄ちゃんじゃないよ。
私達の目の前にいる、背の高い綺麗な女の人だよ。

ビクビクとしながら女の人を見ると、女の人は小さく溜息を吐いた。

「悪い。角で叩くつもりはなかった、ごめんな」

ーーー?!

「……えっ?! お兄ちゃん?!」

大きな声を出して目を見開く私。

「何だよ……気付いてなかったのかよ」

えー?!
めちゃくちゃ綺麗なんですけど!
というか、なんで女装?

お兄ちゃんてもしかして……

「女装が趣味なの……?」

思わず顔が引きつる。


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