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美少女は保護られる〜私の幼なじみはちょっと変〜

第9章 君は変な王子様



「……アホか、 んなわけないだろ。男女逆転て書いてあったろ?」

溜息混じりにそう告げるお兄ちゃん。

「……あぁ!」

そういう意味だったんだ……。
良かった……お兄ちゃん女装が趣味かと思ったよ。

そう言われてみれば、金魚すくいのお兄さんも違和感があった。
やっぱり女の人だったんだ……。

ーーーカシャッ

突然のシャッター音に振り返ると、ひぃくんがお兄ちゃんを撮影している。

「おい……ふざけんな、今すぐ消せ」

ギロリとひぃくんを睨むお兄ちゃん。

「花音に送ってあげるねー」

お兄ちゃんを無視してニコニコと微笑むひぃくん。

……ひぃくん、お兄ちゃん鬼だよ。
そんなにドスルーしないで……。

「……無視すんな、響」

おっかない顔をした鬼がひぃくんを睨む。

そんなお兄ちゃんにニッコリと微笑んだひぃくんは、携帯を差し出すと口を開いた。

「翔《かける》、花音と一緒に撮ってー」
「……自由かよっ! あのな、今俺はお前らのたこ焼き作ってんだよ。んなもん撮れるか、アホ。いいから早く写真消せよ」

イライラしながら溜息を吐くお兄ちゃん。

ひぃくんとの写真欲しかったな……。
だって今のひぃくん本物の王子様みたいなんだもん。

「お兄ちゃんのケチ……」
「ケチー」

私の言葉に、ニコニコと微笑むひぃくも便乗する。

「お前ら……いい加減にしろよ?」

ドス黒いオーラを放つ鬼に、思わずひぃくんの後ろに隠れる私。

その後、何だかんだで写真を撮ってくれたお兄ちゃん。

「あー!翔《かける》の写真が消えてるー!酷いよー」
「煩《うるさ》い。肖像権違反だ」

お兄ちゃんから返された携帯を見てワーワーと騒ぐひぃくん。

そんな中、私はひっそりと自分の携帯を見る。

……大丈夫だよ、ひぃくん。
私の携帯にちゃんと届いてるから。
……彩奈にも送ってみよう。

私は後日、とんでもなく恐ろしい鬼に怒られる羽目になる。

そんな事とはつゆ知らず、私は女装姿のお兄ちゃんの写真を見てクスリと笑ったーー。


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