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インターセックス

第7章 悪夢

 窓から朝日が差し込む眩しさに目が覚めた。眠い目をこすりながら枕元の目覚まし時計を見ると7時半を回っていた。
「やば!」焦った。
一気に目が覚めた。いつも6時半には、起きないと学校へ間に合わない。
慌ててパジャマを着替え洗面所に急ぐ。
 ああ、やってしまった。
 眠れぬ夜の私の頭の中には、すばるの事で頭が一杯だった。
眠ろうと努力したのだが目を閉じるとすばるの抱擁の事を思い出す。
合わせた唇のあの感触、絡み合う舌の感触が自分の性を目覚めさせてしまう。
悶々とした思いが体を火照らせる。
つい昨日まで金子澄也くんとの夢でのラブシーンが作りごとのように思われる。
まあ、実際ただの妄想なのだが。
リアルな接吻は、妄想のそれとは、全く違う。
絡み合う舌の感触が更なる性感を求めてしまう。中途半端に終わった思いは、残酷だ。
その先を妄想へと膨らませる。湧き上がる性的エネルギーに制御が効かなくなる
でも、それを許さぬ自身が抱えるダークサイド。その事がいつも妄想を阻んでいる。
胸が張り裂けそうな位、悩ましい心の葛藤。
私の両親は、胸をはって堂々と生きていけば良いと言う。
私の両親は、特別だ。同性愛者であると言う事で世間から中傷誹謗を浴びせられその苦難を乗り越えて今がある。
その事を聞かされると自分の苦労なんてちっぽけな物に思ってしまう。
しかし、私の中では、生きていくのが辛くなるほど悩ましい事なのだ。
体が求める湧き上がるような性への憧れ。それを抑止する自制心との葛藤。
どうしても性への欲求と愛が結びつかない。
異性を愛することを心が拒絶している。
それは、たぶん拒絶されるかもしれない事への恐怖心からなのだろう。
恋愛そのものが良くわからない。

 焦って着替えてダイニングに降りると母が父を送り出していた。
「夏音、どうしたの。遅刻しちゃうわよ」
「ああ、ごめん。目覚まし鳴らなくて」
「何言ってるのよ。目覚まし鳴ってたわよ。起きないから何度も起こしに行ったのよ」
「そうなの? とにかくもう行くわ」焦って洗面所に向かい顔を洗う。
「朝ごはんどうする?」母が聞いてくる。
「ああ、今日は、いいや」
今朝は、なんだか食欲もわかない。
急ぎカバンを持って飛び出すように家を後にした。

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