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インターセックス

第13章 親友

とにかく後先考えずその場を離れようと何も持たず脱衣所へ走った。
「待ってください」すばるが追いかけてくる。
脱衣所へ飛び込み隅でうずくまって泣いた。
中にいる人達は、心配そうに私を見ている。
すぐにすばるとゆいがやってきた。
泣いている私の肩に手を添えてゆいが慰めてくれた。
「夏音、心配しなくて大丈夫だよ。私は、貴方の事をみんな知ってるから。知っていて友達になったのよ」
「先輩! 元気出してください。私も味方ですから」
「どうして? どうして知ってるの?」
ゆいの顔を見る。
「まあ、帰りにでも話すわ。とりあえず着替えて帰りましょ」

 帰りの電車内でゆいが話し始めた。
「私、夏休み前に貴方とすばるが行き合った日、同じ電車にいたのよ。あなた達が話しているの聞いちゃった」
「私達の話し聞いていたんですか」
「わざとじゃないのよ、聞こえちゃったのよ。最初何を言ってるのかよく解らなかったわ」
「でね、ネットで調べたのよ貴方のこと、そしたら出るわ出るわ貴方の悪口、顔写真までさらされて。その中に貴方のお父さんからの書き込みもあったわ。『根拠のない誹謗中傷には、法的手段を取る』ってね。これは、何かあるって直感したわ。もしかしたら性分化疾患じゃないかって思って。それで夏休み中、貴方のことを調べたの」
「性分化疾患の事、知ってたんですか」
「だって、私もそうだもの。でも私がまだ幼い頃に親が心配して手術しちゃったのよ」
「えー私と同じだったんですか」
「そう、おんなじ。それでね調べたのよ。貴方が行ったバイト先の旅館とかググっていたら、ブログで同じところに勤めてる椎名さんに行き当たったのよ」
「椎名さんにですか」
「それで直メール送ったの。私が同じクラスだって。色々とやり取りをしていたんだけど椎名さんは、貴方のこと言わなかったわ。で、『友達になってやってくれ』って。いい人ね椎名さんて」
「そうだったんですか。そんな事があったんですね。これで何もかもが腑に落ちました。急にゆいさんが友達になるって謎だったから」
「ごめんね、ストーカーみたいなことして」
「いいんです。安心しました。同じ境遇の人が友達になってくれるなんて夢みたいです」
「これからは、親友よ私達」
そばで聞いていた隆一が感心している。
「なるほどね。そうじゃないかと思ってた」

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