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インターセックス

第13章 親友

 そんな事があり、初の水着デビューは、楽しく終わろうとしていた。

 しかし、現実は、そんなに甘いものじゃなかった。
楽しいはずの一日に水を指す出来事が起こった。

 もうそろそろ帰ろうと荷物を片付けていると後ろから聞き覚えのある声がした。
「あれー、夏音じゃないの?」
振り向くと川崎哲也だった。
「どうして……」一瞬言葉を失った。
さっきまでの浮かれた気分が一転して冷めていく。
「お前、何でここにいるんだよ!」とすばるが言う。
「えー、何でって、こっちのセリフだよ。こいつのせいで俺が大変な目にあったんだぞ」と私に向かって言う。
憂鬱で閉じこもっていた時、こいつを殺して私も死のうかと考えた事があった。
その怒りが蘇る。でも今ここに居る友人たちに知られたくない、そんな気持ちが勝っていた。

 すばるも事情を知っているので怒りが湧いている。
「ふざけんなよ。おい! お前のしたこと。何をしたか解ってるんだろうな!」すばるは、大激怒。
ゆいと隆一が唖然として私達のやり取りを見ている。
「何をしたかって…… 俺は、事実を言っただけじゃん。なのに何で俺が停学くらうんだよ」
「ふざけんな! お前なんか何も知らないくせに。事実は、違うんだよお前の考えてる事と」すばるが返す。
回りの人たちも驚いて見ている。
私は、なんとかこの場を収めようとした。
「もお、いいのよすばる。これ以上」
「でも、先輩! こいつほっといて良いんですか?」
と、そこにゆいが口を挟んでくる。
「あんた、あんたが夏音を貶めた犯人ね。前の学校の事は、知ってるわ。夏音の秘密も知ってるわ。あんたは、勘違いをしている」
驚いた。耳を疑った。ゆいが私のことを知っているってどういう事?
「な、何が俺の勘違いなんだよ。だって……」
「貴方は、夏音の本当の姿を知らない。事実を知らないで男だとか決めつけたんでしょ」
「何だよ、じゃあ、あれは、なんだったんだよ」
「この世の中にはね、あんたが知らなくて良いことがいっぱいあるんだよ」
「もうやめて、もうこれ以上」私は、悲しさが込み上げてきた。
私は、それ以上この場所に居たくなかった。
とにかく後先考えずその場を離れようと何も持たず脱衣所へ走った。

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