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インターセックス

第14章 発覚

 帰路につくと小雨が降り出した。夕暮れの北千住駅前は、帰宅ラッシュで混雑していた。
隆一が折りたたみ傘をカバンから出してさす。
「雨、降ってきちゃったね。入りなよ」
「ありがとね。隆一」
「どうしたの? 何かあったの川谷さんが白石とカラオケなんて」
「ちょっとね。問題ありね」
「問題って、例の事?」
「そう、例の事。川崎哲也まで来ちゃって」
「川崎って、プールで会ったやつ?」
「そう、その川崎。白石さんと知り合いだった」

 私の頭の中は、混乱していた。とうとう正体がばれてしまった。
これから、学校での生活は、どうなるのだろうか。そしてゆいの裸の写真の事を思い出す。
不安が一気に増してくる。本当にどうしていいかわからない。
足が動かない。前に進めない。
心が折れてゆく。


 私は、その場に座り込み泣いてしまった。
雑踏の中、通り往く人たちが私を避けていく。
「大丈夫? 夏音」隆一が私の事を下の名前で呼んだ。
そして私に傘をさし、しゃがみ込んで肩をそっと抱いてくれた。
少しだけ、隆一が愛おしく感じた瞬間だった。

 その日は、隆一に励まされ帰宅した。

 自宅に着いた私は、夕食も食べずに部屋に閉じこもってしまった。
母が、心配している。ベットで横になり常夜灯を灯した暗い部屋で時間だけが過ぎていった。

 ふと、時計を見ると深夜12時を回っていた。
玄関を開ける音と父の「ただいまの」の声が階下から聞こえてきた。
私が重い体を起こしリビングへと向かう。
リビングでは、父がネクタイを緩めソファに座り書類を見ている。
「お帰りなさい」
「おー、ただいま。どうしたこんな夜中まで」
「お父さんこそ大変ね遅くまで」
「ああ、今、仕事が立て込んでいてね。疲れたよ…… 眠れないのか?」
「ちょっとさ、問題が発生して」
「どうした、何でも言ってごらん。聞いてあげるから」

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