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インターセックス

第15章 初恋

 昨日の一件で昨晩は、眠れぬ夜を過ごし少し目が腫れていた。
その日の朝は、雨が上がって晴れていた。
北千住駅を出て学校へ向かって歩いていた私に隆一が声を掛けてきた。
「おはよー」
隆一が私の横に並ぶ。
「ああ、おはよう」
「どう? 昨日は、眠れた?」
「駄目ね。眠れなかったわ。寝不足で頭がボーッとしてるわ」
「でも、良かった。夏音が学校来てくれて」
「来ないと思った?」
「ああ、もしかしたら休んじゃうかなと思ってた。相当落ち込んでたからね」
「そうね、正直言って登校するのが憂鬱よ。学校着いたら何か言われるんじゃないかと不安で」
「大丈夫だよ。白石さん達だって解ってくれたんでしょ。何かあっても僕が守ってあげるから」
「隆一くんが守ってくれるって? 大丈夫なの?」
「んー??? 大丈夫だと思うけど」
「んー、の後の『トリプルクエスチョン』は、何?」
「わからないけど…… まあ、大丈夫だよ。『俺に任しとけ!』って意味」
「何? その根拠のない自信は」
「愛だよ。愛。わかる? 俺の愛」
「はあ? 突然、愛って言われても、わからんわ。お前の愛は」

 こうして、学校に着いて恐る恐る教室へ入った。
教室に入るといつも通り生徒たちが雑談している。
まだ何も伝わっていないようだ。少し安心した。
席につくとゆいがやってきた。
「おはよう、夏音」
「ああ、おはようゆい」
「昨日は、ごめんね。付き合えなくって」
「ああ、大丈夫よ」
「どうだった。カラオケ」
「……」昨日の話は、できない。
何も歌わず川崎哲也と白石さんにゆいの裸の写真で脅された事は、どうしても言えなかった。
「あれ? どうしたの。つまらなかったのカラオケ」
「ちょっとね……」
「私、白石さんの事、嫌い。あいつ、やな奴なのよ。今度、私とカラオケ行こう。ねっ夏音」
「白石さんと何かあったの?」
「ん、ちょっとね個人的な事で……」
「彼氏の事とか?」それとなく探ってみた。
「えっ、何か聞いたの白石の奴から」
「やっぱり、彼氏の事なのね。それって大学生なの?」
「何、何でよ。白石から聞いたのね。どこまで聞いたの」
「ごめん、推測だけなの。白石さんは、何も言ってないわ」
「何でそんな事聞くの? 大学生じゃだめなの?」
「そんな事無いけど。どうしたの、怒ってる?」
「怒ってないけど。その事は、あまり詮索されたくないの」

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