テキストサイズ

逆ハー戦隊シャドウファイブ

第14章 14 イタリアントマト

ピリッとした辛さがちょうど良くて、トマトソースの甘さを刺激的に変えている。なんて美味しんだろう。ここのアルバイト最高かも。あつ子さんも「うちのパスタが最高!」と言いながら美味しそうに食べている。

「ほんとに、最高です」

私も同調して食べていると赤斗さんは笑って「まだまだだよ」と言う。
健一さんも赤斗さんと同じ意見らしく「まあ、もう一歩ってとこだろうと」ふくよかな身体を揺する。

「随分、俺が作る様になったけど、まだ親父の方が美味いんだよ」
「へえー」

健一さんはまんざらでもない顔をする。若い頃、健一さんはイタリアを旅行し、食べたパスタに感動するとそのままそこで料理の修行をしたということだ。また修行しているときに出会ったあつ子さんに一目ぼれしプロポーズをした。

「すごい情熱的なんですね」

ゆったりとした健一さんは若々しい綺麗な瞳を輝かせる。

「赤斗はわたしに似ないで家内に似たせいかちょっとのんびりだけどねえ」
「そうねえ。のんびりねえ」
「まあ、せっかちじゃないかな」

赤斗さんも同意している。この家族はなんだかとても、ゆったりしている気がする。毎日おいしいものを食べていると不満が出にくいのかもしれない。そしてそのゆったりとした空気がお店の雰囲気にもなっているのだろう。一日しか働いていないが、急いでいるお客さんはおらず、『まだ?』と急かす人もいなかった。帰り際皆、満足げに『美味しかったです』『ごちそうさまでした』と気持ちの良い一言をくれた。
ここでバイトしながら私も美味しいものを作れるようになりたいなと思った。
そしていつか、愛する人のために得意料理を振舞いたい。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ