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逆ハー戦隊シャドウファイブ

第14章 14 イタリアントマト

 開店時間は11時からだけど、30分前にはもう人が並び始めている。やっぱり人気のお店だ。健一さんとあつ子さんもお揃いのユニフォームでスタンバイしている。
私はあつ子さんと同じ仕事でメニューを聞いて、料理を運ぶ。調理は赤斗さんと健一さんがするようだ。
あつ子さんはのほほんと「あたしは料理ちっともダメなのよ」と笑った。

「そうなんですかあ」
「うん。食べるのは大好き」
「あ、私もです」

4人でお揃いの服を着ていると親密度が増してくる。さて開店時間がやってきた。あっという間に満席になってしまう。これは慌てるなと言われても焦ってしまう。おろおろしているとあつ子さんが「平気平気。急いでる人はうちに食べに来たりしないから」と赤斗さんとよく似た明るく朗らかな笑顔を見せてくれる。
あつ子さんは私に二人掛けの方を担当させ、人数や注文の少ない方で経験を積ませてくれる。お昼はランチメニューがあるのでそれ程複雑な注文はなかった。引っ切り無しにテーブルと厨房を行ったり来たりする。
いつの間にか慌てているようで、ときおり赤斗さんも「桃香ちゃん、ゆっくり笑顔でね」と彼こそ忙しいのにゆとりを感じさせてくれる。
少し注文の流れが緩やかになってくると、厨房の中を覗く余裕が生まれ、深い鍋をレードルでかき混ぜている健一さんの隣で、赤斗さんは腕まくりをしてフライパンを揺すっている。日に焼けた逞しい腕は軽々と大きな鉄のフライパンを自在に操る。少し汗ばんでいて、オリーブオイルのせいか顔がテカリを見せているが、それがまた格好良かった。スプーンでソースを味見する前にやっぱりスプーンにキスをする。キスが癖なのか分からないが、料理をしている赤斗さんがとてもセクシーで見ているとまた顔が火照ってしまった。
ランチタイム最後のお客様が去った後、食器を下げると「お疲れ、片付けは後にしてとりあえず昼にしようか」と赤斗さんが席に着くように促した。
店をクローズし、健一さん、あつ子さんと共にテーブルに着くと、赤斗さんがパスタとサラダを運んでくる。

「今日は寒かったせいかアラビアータが良く出たね」
「そうねえ。クリームも寒い時にはいいと思うんだけど」

目の前に真っ赤なトマトソースのスパゲッティが差し出される。

「さ、食べて」
「はい。いただきます!」

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