森の中
第1章 1 ハイキングコース
男は不躾にも瑠実の顔をじっと見つめる。勤め先の高慢な店長でさえこのようなプレッシャーを人に与えることはできないだろう。視線を痛く感じながらゆっくり足を一歩さげると柔らかい濡れた落ち葉を踏んで滑り、しりもちをついてしまった。
「あ」
尻を打ったが痛みはなく、ただただ恥ずかしさで赤面をしすぐ立ち上がって、また頭を下げて立ち去ろうとした。
「待ちなさい」
男がきつい口調で瑠実の行動を制す。命令口調に瑠実は立ち止まった。
「切ってるじゃないか……」
滑った時に鋭い木の枝に引っかかったらしい。太腿の真ん中あたりから膝までの側面を一五センチほど黒いレギンスごと破いて傷になっている。
傷は浅いようだが滲み始めた血を見て瑠実は痛みを感じ始めた。
「山の中にこんな軽装で来るなんてな。それじゃハイキングどころか散歩だ」
忌々しそうに言う男に瑠実は辛い気持ちになり泣きたくなるのを我慢していた。
「すみません。失礼します」
去ろうとする瑠実に
「待てと言ってるだろう。こっちに来なさい」
と、手首をつかんで引き寄せた。そして引っ張るようにして歩き出す。瑠実はおびえた小動物のようにされるがままに連れていかれた。
「あ」
尻を打ったが痛みはなく、ただただ恥ずかしさで赤面をしすぐ立ち上がって、また頭を下げて立ち去ろうとした。
「待ちなさい」
男がきつい口調で瑠実の行動を制す。命令口調に瑠実は立ち止まった。
「切ってるじゃないか……」
滑った時に鋭い木の枝に引っかかったらしい。太腿の真ん中あたりから膝までの側面を一五センチほど黒いレギンスごと破いて傷になっている。
傷は浅いようだが滲み始めた血を見て瑠実は痛みを感じ始めた。
「山の中にこんな軽装で来るなんてな。それじゃハイキングどころか散歩だ」
忌々しそうに言う男に瑠実は辛い気持ちになり泣きたくなるのを我慢していた。
「すみません。失礼します」
去ろうとする瑠実に
「待てと言ってるだろう。こっちに来なさい」
と、手首をつかんで引き寄せた。そして引っ張るようにして歩き出す。瑠実はおびえた小動物のようにされるがままに連れていかれた。