
Melty Life
第3章 春
* * * * * * *
この間まで新学期だの新生活だの、随分騒がしかった世間は、たったひと月を経ただけで、大型連休に浮かれている。
羽根を伸ばしている人間もいれば、休みなど無関係な人間もいる。
「痛──っ……」
寝台を降りたゆうやの下半身が、ずきんとした。
「ゆうくん、……」
ゆうやを呼んだ声の主は、彼女こそ患部をこしらえた当人のくせに、そんな昨夜のことなど忘れてしまったんじゃないかといった調子で、今しがたまで同じシーツにくるまっていた少年の背中を見つめている。
女神のような眼差しだ。
振り向かなくても分かるのは、昨晩、ゆうやは彼女の顔を食傷するほど目に焼きつけたからだ。
「何だよ」
「痛くしちゃったかしら。傷はない?」
「あっても見えねぇよ」
痛むのは、一般に生殖器と呼ばれている部位だ。ゆうやにしてみれば、金を製造するための器官。
下着をつけた途端、数時間前、猥褻な遊具の恥辱を受けていた一部が布にこすれて、また声が飛び出しかけた。
