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Melty Life

第3章 春



「うん、特に、先輩は三年生だし」


 あかりは、もう半月ほど顔を見ていない水和を懐かしむ。

 LINEで話している限り、彼女は今、文化祭の舞台の配役投票に向けて、奮戦している。
 演劇部のキャスティングは、部員全員の意見が反映されるもので、当面は全登場人物の台詞を習得するのに全ての自由時間を費やしているらしい。

 そうした報告が本人から届くところからして、水和はあかりに関する噂を知らないようだ。部活動に入っている生徒であれば、スキャンダラスな情報網には強いというのに、演劇部員である前に受験生でもある水和には、自分の内申書に響くかも知れない人間関係を整理しようという動きが見られない。


「知香ちゃんの言う通り、気にしすぎなんでしょ。普通、生徒の悪い噂信じてる方が、人間性どうかと思うよ」

「ですよ!宮瀬先輩が、花崎先輩に距離を置くことなんてないです。今から会いに行きますか?」

「玲にも言っとくね。陰口みたいなこと、やめた方が良いよって。ってか、しつこいね。もう一ヶ月近いよ。あかり、やっぱり否定しなよ」

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