
Melty Life
第5章 本音
「有り難うございます。では、……衣川さん。森本、田辺」
来須の指示を受けた三人が、視聴機器とスピーカーを操作した。
ややあって聞き覚えのある音声が流れ出すと、講堂の一角から常軌を逸した悲鳴が上がった。
狂気に駆られた少女の悲鳴は、スピーカーを切るよう求めながらも、言葉を紡ぎ出せていない。
「イヤァァアアああああっっ……やめっ!!切っっ、、ヒイィいいいいいいいい…………っっ」
「来須くん!これはどういう……!」
「誰かっ、来須くん……!!」
悲鳴の出どころは、咲穂だ。
数人の教員達が暴れる咲穂を取り押さえて宥めるのを横目にして、衣川達は、大人達がスピーカーの停止ボタンを押すのを防ぐように機器を囲って立っている。
スピーカーから流れ出したのは、先週、あかりが咲穂から受信した録音データだ。
そこには咲穂を中心とした仲良しグループの会話が入っていて、会話は、彼女らが水和を陥れたこと、それによって彼女らが愉悦に浸っていることなどを確証していた。
録音の中で、咲穂は来須を攻撃していた。来須は境遇が恵まれすぎていたというだけで、勉学やスポーツにも長けているのは彼自身が優れているのではなく、きっとそういう血筋だからだ、と。あかりに関しても指弾していて、親にも忌み嫌われていて、実際、愛されようと努力もしていないのに、同世代の生徒の心棒だけは集めているのが鼻につく、という内容だった。
来須とあかりを打ちのめすために、咲穂は彼らがおそらく大切に想っている水和を罠に嵌めることを思いついた。結果、水和は登校しなくなり、何故かここの理事長は両親に頭が上がらないようで、それも咲穂の自尊心を満たした。水和のような女も元々嫌いなタイプに入るし、万が一あかりが彼女を助けたがれば、姉にも上級生もろとも無様な目に遭わせれば良い。
