
Melty Life
第5章 本音
そこで録音は切れていた。
動揺し、どよめく生徒達に、来須は今一度の沈黙を求める。抗議する一部の生徒らにも、来須は辞を低くして猶予を願った。
「こんなデータを公にして、咲穂さんのプライバシーを侵しているのは承知です。しかし皆さんに今、聞いてもらった通り、僕の大切なクラスメイトが、この件で深く傷つき、安心して登校出来なくなりました。先週とうとう学校に来られなくなりました。もう大丈夫だと連絡して、今朝は来てもらいましたが、咲穂さんの主張による先生がたの過度な尋問で、花崎さんは心の傷を負ったまま、残りの高校生活を続けなければいけません。僕の学校内での振る舞いが、咲穂さんの気に障ったことについては、配慮が足りなかったと思います。生徒代表として驕っていた部分もあったのだと、反省します」
「来須様に責任はありません!」
「千里様ぁっ」
「けど、どうなの?録音データ流された子、可哀想。生徒会長、やりすぎじゃないですか?!」
「お姉さんって、宮瀬さんのこと?……あー、確かに女子受けする顔だよねぇ」
「一年生の子達が可哀想です!」
「イケメンだから何でも許されると思うな来須!」
生徒らが口々に感想を述べる中、あかりは三年生の生徒達が並ぶ後列へ振り返る。
講堂の出入り口付近からやや離れた女子生徒達の列に、少し目を凝らせばすぐに分かる、日焼けとは無縁の真珠色の顔を壇上に向けた水和の姿があった。
出席名簿からするに教師らの目を盗んで入れ替わったのだろう、水和の両脇には百伊と山下。あかりのよく知る上級生らは、まるで姫君を守る騎士の面持ちで水和を間に挟んでいる。
