
Melty Life
第5章 本音
「様々なご意見、有り難うございます。前置きの通り、この件は生徒代表の僕としてでなく、個人としてお話しさせてもらっています。花崎さんにここまで迷惑をかけてしまったのは、僕の責任です。咲穂さんが話していた通り、僕の祖父……厳密には父が、咲穂さんのご両親に弱みを握られているからです。僕の父が秘密にしてきたことを世間に公表されてしまえば、来須の携わる事業の信頼が危うくなります。しかし僕は父とは関係ありません。父が家の面目を守ったのと同様、いえ、もっと切実に、僕には守るべきものがあります」
「…………」
「花崎さん」
来須は、完全に彼自身の顔になっていた。
あかりにお節介を焼きたがる、そして年相応の少年らしく、水和に初恋心を告げた来須は、大人達の顔色など少しも窺っていない顔だった。
生徒らが心酔する生徒会長ではなく、来須千里が、壇上でマイクに向かっていた。
「僕は……俺は、花崎水和さんを愛しています」
「来須くん!!」
「先生、お願いです、もう少し……っ」
さすがに止めに入ろうとした教師を制して、衣川達が来須を促す。話したいなら、早く話しきってしまえ。
来須は、友人達に目で感謝を伝えると、背筋を正した。
「中等部から淡海ヶ藤に入ってきた花崎さんは、最初、クラスじゃ全然目立たない、おとなしい生徒でした。外部受験生で、初対面でこんなこと思うのもさしでがましいかも知れなかったけど、僕は彼女に友達が出来るかも心配でした。それが第一印象で、やっぱり二学期、三学期になっても、率先して何か行動するような印象はない人でした」
