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Melty Life

第5章 本音



 水和に特別な興味があったわけではない。ただそのおとなしさゆえに、来須の持ち前の「困っている生徒には手を差し伸べなければ」という義務感が働いて、ことあるごとに水和を気にかけていたのだという。

 来須の心配は杞憂に終わった。

 水和には親しい友人がいつも付いているようになっていたし、来須が入る隙もないほど、彼女は楽しげに学校生活を送るようになっていた。俯きがちな姿勢はいつの間にか惹きつけられるほど堂々としたものになっていて、消極的に見えた彼女が、実は同世代の女子達に比べて遥かに意思がしっかりしている一面を知った。


「結局、いつも花崎さんに目が行ってたんですね、俺は。花崎さんは努力して、なりたい彼女になったんじゃないかと思います。おこがましくも、俺はそんな彼女の生き方に憧れて、ずっと尊敬しています。自由で、目指すものが明確で、正直で。俺にそんな生き方が出来なかったから。親や家の言いつけ通りにしてきたから、花崎さんみたいに、こうしたい、あんな風になりたいと、考える機会もなかったんです」

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