
Melty Life
第2章 初デート
花柄のコンパクトミラーを開いて、あかりは前髪を整えていた。
眞雪の愛用品に映るのは、思春期真っ盛りにしては、性を逸脱した種類の顔立ち。余分な飾り気もなければ頰の曲線も薄い中性的な顔、毛先をすかした短めの黒髪は、水和ほど読めないタイプの相手でなければ、少し甘い言葉をかけてやれば、恍惚とさせられる因子が備わっている。
試験前、サブカルチャー系の店が集う区域で偶然見かけて気になっていたアパレルショップの洋服も、袖を通すことに全く抵抗はなかった。皇子服に比べれば着やすい。
気の置けない眞雪といつまでも続けていられるような雑談をして、階下で彼女の両親達と朝食をとって、家を出た。
ツインテールが定番の眞雪は、例にもれなく、うさぎのように毛先を宙に遊ばせている。
あかりを駅まで付き添ってくれた彼女は、屈託ない。最近ハマっているという某大型動画SNSの配信者や、春休みの願望を、次から次へと話してくれた。家でも外でもこんな調子だ。
眞雪と別れて電車に揺られている間、あかりの無意識をプレッシャーが押し潰そうとしていたようだった。
