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Melty Life

第2章 初デート



 隼生がコレクションに加えるのは、歴史に名を連ねる類の芸術家達の産物とは限らない。破格の値打ちがつくようなものの方が、珍しいのではないか。
 彼が目をつけるのは、一期一会の傑作だ。過去に何度か、作者の名前を訊き損ねて落胆する姿を見せたこともあったものだが、千里は隼生の、世間の評価に左右されない、彼独自の感性を貫く姿勢を好ましく思う。


「今日は、生徒会は行かなくて良いのか?」

「召集ばかりかけていたら、皆が可哀想だしね。どっちにしろ今週末から忙しくなる。新入生歓迎会のステージ発表、各団体の出し物を全部チェックして、必要があれば時間配分の見直しだ。加えて俺らは、新学期の各行事の進行、スピーチ確認。昨日と今日で体力温めておいて、って、衣川さん達にも頼んでおいたよ」

「そうかそうか。若い子は頑張るなぁ。ところで、おじいちゃんが千里くらいの年の時分は、貴重な休みに年寄りの家に遊びに行ってやったりしなかったぞ。親に誤魔化して娯楽街へ繰り出したり、あとだなぁ、気になる女子にデートを申し込んだり。一度しかない青春だ、千里はもっと遊ぶべきだと思うがね」

「おじいちゃーん……誰もが気になる女子とデートが出来ると考えてるなら、改めた方が良いよ。今後おじいちゃんが誰かにアドバイスすることがあったとして、傷を抉られる若者が増えたら気の毒だ」

「またまた。千里もこの間は、どこぞのお嬢さんと水族館へ行ったんだろう?」

「あれは、デート……だったのかな……」

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