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Melty Life

第2章 初デート


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 遊園地が野外活動を好む人間のテリトリーだというのは、くだらない先入観だった。

 いかにもといった絶叫マシーンを制覇していく類の客は、あくまで一例だ。

 その一例を除けば、あとの客はあかり達のように、メルヘンチックで非日常的な空間を求めて来たというだけの様子で、買い物やカメラアプリに夢中である。


 実際、施設は客のニーズをよく理解していると思う。
 外国の街並みをそのまま切り取って運び込んできた感じの散策路や、四季折々の花が植えられた小規模庭園、ファンタジックな宿泊施設が景観の主役を張る土産物屋の並んだ区画は、そこがもはや一つの観光地として完成していて、軽快なBGMの流れる随所で、ドレスや着ぐるみで変身したキャスト達がパフォーマンスを披露している。


 さしあたり童話から抜け出てきた佇まいの水和は、園内の雰囲気を盛り立てる要素一つ一つに、物心ついてまもない少女を聯想する目を輝かせていた。SNSは使ったことがないと話しながら、カメラアプリのシャッターを切りまくる彼女は、メルヘンチックで非日常的な眺望を、あとでいつでも振り返れるようにしたいらしい。

 もとより遊園地で会話が途切れる懸念もしていなかったが、多分、水和のこまやかな気配りが、時間の経過を感覚以上に速めていた。彼女はとりとめない話題を振っては、自分についてよく話し、適度な距離を保ちながら、あかりについて聞きたがる。

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