テキストサイズ

Melty Life

第2章 初デート



「地元民のくせに、浮かれちゃうなぁ。こういう場所は子供の頃さんざん連れて来てもらって、飽きていたと思っていたのに、皆が勧めてくれたのに納得したよ」

「お友達のお勧めだったんですか?」

「百伊達にね、デートするならどこが理想って訊いてみたら、ここだって。意外でしょ」

「あのクールビューティな先輩が?!」

「ふぅん、あの子、やっぱりそういうイメージなんだ。……うん。そういうことにしておこう」

「違うんですか?こっそり教えて下さい、花崎先輩といつも一緒にいる人のこと、もっと知りたい」

「私より好みだったら、彼女の方に乗り換える?」

「百パーセントありえません」


 噴水を囲って配置されたベンチの一つに腰を下ろして、水和があかりに冗談っぽく笑いかけていた。初春の日差しに透けてしまいそうだった白い肌を、パラソルの影が庇うようにして覆う。


 彼女が百伊と呼ぶ二年生は、笹川百伊(ささかわももい)。
 同じく演劇部に所属していて、一部の、俗に言う歌劇ファンを自称している女子生徒らからは、いわゆる身近なアイドルとして人気の高い生徒である。水和が表情豊かな少女の役を得手とするなら、百伊は寡黙な少年役。あかりも百伊の存在は舞台で当然のごとく知っていたが、ここまで親しい間柄だったということまでは、水和と話して初めて知った。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ