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Melty Life

第2章 初デート



「そっか。宮瀬さんって、ネコ?っていうのかな、それっぽい子の方が好きそうだもんね」

「そういう問題でもないですけど……」


 あかりは水和の隣に腰を下ろす。

 広場では、キャスト達が器用な手つきで、バルーンアートを披露していた。はち切れんばかりに空気の入った風船が、色とりどりのウサギやらイヌやらに形成されて、子供達に与えられていく。
 種も仕掛けもないゴム仕様の筒袋に、次々と、まるで命が吹き込まれてでもいく様は、魔法のようだ。現実には魔法なんてないのに。



「今は、親友さんより、来須先輩達の方が気になります」

「え?」

「花崎先輩の近くにいられる時間、二人の方が、あたしよりずっと長いですもん。気にならない方が無理っていうか……」

「全然、クラスじゃ話さないよ。それに私、コミュ障だし。あまり知らない人と話せない」

「花崎先輩が?まさかー」

「いやいや、ほんとに!」




 あ。まただ。──……



 大袈裟にかぶりを振る水和の慌てた顔色に、声の調子に、あかりはまた、身に覚えのないほどの時を奪われていく感覚に飲まれかける。


 時が速く感じるのは、退屈しないからではない。会話が続く、続かないの問題でもない。



 あかりは水和を見ているだけで、ただただ夢中になってしまう。

 午前中が良い例だった。先月まで声をかけるための名目もなかった相手の一挙一動に感動して、シャンプーの残り香に抱かれるほどの至近距離で存在感を噛み締めて、努めて顔に出すまいとしていても、その実、頭は今も、とろけそうにくらくらしている。
 振る舞い方など分からない。何かしらの言葉に当て嵌められる程度の魅力なら、大抵、その通り口にしておけば良い。相手の少女はあかりの言葉に、うぶな頰を染めてきた。しかし相手が水和となると、相応の言葉が見つからない。あかりも判断力を失う。
 


 当たり障りのない会話の片手間にスマートフォンをチェックして、風船の芸当を心ゆくまで眺めたあと、二人、カフェに移った。

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