
Melty Life
第2章 初デート
「うん。パエリアもオムレツも美味しかった。宮瀬さんは菜の花パスタ?」
「はい。こういうのに入ってる、今の春野菜好きなんです。苦くて」
「分かるー!」
「付け合わせも美味しいですよね。こっちはフリット、さくさく」
「うんうん」
「お待たせいたしました。食後のお飲物をお持ちいたしました」
見た目はスイーツのデザートドリンクと、空き皿とが取り替えられていった。
水和は化粧ポーチを出して、口を軽くティッシュに抑えた。
見覚えのあるリップグロスが、にわかにあかりの目に留まる。
「あ、それ」
「実はつけてたの。ヘビロテしてるよ。有り難う」
「ぉわっ、そうなんですか、こちらこそ……」
ほぼグロス効果のみの薄ピンクの中央に、パープルのラメがハート型になって埋め込まれたリップグロスは、ただでさえ嬋娟な水和の唇を危なかっかしいまでに華やがせる。
自分から贈りつけておいて、あかりが今まで気づかなかったのは、直視するだけで罪になってしまうようなその唇を、もちろん白昼堂々と眺める勇気はなかったからだ。
「苺ヨーグルトとラムネでしたっけ?綺麗な色……」
「ピンクと青の二層ドリンクなんて、ゆめかわいいよね。見た目オーダーだよ」
「花崎先輩に似てる」
「ええー?」
「配色とか」
「あー、今日は否定しないかも。宮瀬さんは、クレームブリュレ?」
「こっちも珍しいですよね。見た感じ、そんなにドロドロしてなさそう」
定番デザートの名前を借りたドリンクは、あかりがグラスを傾けると、水面はさらさらと揺れていた。
