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Melty Life

第2章 初デート


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 トレンドも、季節も、先取り出来るものは余すところなく先取りした薄手のアウターに、人工的に起こした風が、ラフな抜け感を演出しているトップス、悪い感じに着崩して初めて、デザイナーの意図が映えるボトムス。学生の小遣いでは買えない、いや、大多数の社会人でさえ、購入に至るには二ヶ月は倹約生活を余儀なくされるだろう桁の、華美なだけのアクセサリーを、育ち盛りの強健な肉体を差し引いても重たげに見えるほど重ねたコーディネート。

 それ以前にここは日本か、と、ともあれどこから指摘すべきか余計に頭を抱え込まされるような舞台美術を背にして、非現実的な格好をした少年達は、思い思いにポーズをとって、カメラに愛想を向けている。


 大人達の着せ替え人形。

 彼らは、いっそそう呼ばれてしまえば収束つくのだろうが、この現実離れした被写体達の中には、幼い頃から憧れた夢をようやっと掴み取った自分自身を他人以上に愛してやまない者もあれば、今は将来の雄大な目標のための準備段階に過ぎず、こつこつと下積みを重ねている者もある。また、本当に着せ替え人形に過ぎない者もあるから、写真と文字のみが情報の全てとなる雑誌では、彼らを理解しきることは不可能なのだ。



「美しいわね」


 混濁した不具合を一緒くたにまとめて、つるんとした整理ケースに押し込めたようなページを操っていたゆうやの頭上に、艶のある通った声がした。やはりどこか悪いものの隠蔽を疑ぐる類の、醜いもの特有の美声。

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