
Melty Life
第2章 初デート
まもなくして、社長が嬉々として開けた扉から、訪問者が現れた。
はっとするほどの美少女だ。玲瓏という言葉がしっくりくる、ともすれば西洋の騎士を彷彿とする凛とした顔立ちの少女は、それでいて日本人離れしているのとも違う。腰まである長い髪は、ここまで伸ばしておきながら、見事に手入れが行き届いている。健康的な白さの肌は、透け感よりきめが目を惹く。赤と黒のゴシックパンクファッションは、少女自身の華が功を奏して、垢抜けているのに全く派手な感じがない。
ゆうやを追ってきたファンではない、少なくとも同業者であることを瞬時に理解した。
「え……こいつですか……」
「そう。こいつ。ねぇ、イケメンでしょ?どう、貴女みたいな美人から見て、ウチのモデル」
「すみません、圏外」
「えぇええ……!」
「あのー、私、人気キャラなんであえて言わせてもらいますね。男と撮影とは聞いてません」
「オイ!俺だって女と撮影とは聞いてねぇぞ!」
「おっ!金髪くん気が合うー。キミも男が良かったよね?!」
「っ、何だと……お前も女が良いか!」
「…………」
おそらく解釈の相違が幸いしての一時休戦中、改めて、ゆうやは社長に、少女を呼んだ経緯を聞かされた。
つまりゆうやは、この希宮莢(のぞみやさや)──…一点の曇りもない亜麻色の長い髪が特徴的な(おそらく彼女のファンからすれば、特徴的なのはその長身。顔。声。そして顔。……それから、顔)彼女と今日、これから雑誌の特集ページの撮影を、相手役として共にする予定を控えているらしい。早い話が顔合わせである。
企画内容は、『ボーイッシュガールがデートで見せる可愛い姿に、男子がメロメロ♡』…………
初めて企画書類に目を通すや、ゆうやはいよいよ鳥肌が立った。
どこの夢見がちな童貞が企画したのだ。そして何故、ゴーサインが出た。
