
Melty Life
第2章 初デート
「花崎先輩」
「何?改まって」
「先輩のお芝居、大好きなんです。先輩はあたしのことなんか知らないと思いますけど、あたしはずっと見てました」
「…………」
「迷惑じゃなければ、これからも好きでいさせて下さい。先輩が恋に興味を持ちたいと思うまで、何ヶ月でも待ちます。何年でも──…あ、っていうのは、さすがに待てないので、そうだ、興味、持たせてみせます」
案の定、水和は目を瞠ったまま、その唇は開閉を繰り返していた。
押しつけがましい自覚はある。しかしあかりは、水和との縁を、今日限りにしたくない。ひと握りの可能性でも掴まえていたい。いつか水和があかりを選ぶことに何の後ろ暗さもいだかなくて良くなるまでに、自分を気に入らせてみせる。彼らと天秤にかけた結果でも、理屈でもない、単純にあかりが好きだと言わせてみせる。
あかりの幸せのためにではない、水和に、今日以上の時間を与えられるようになれれば、それは彼女を愛する意義になる。
「花崎先輩はこれからも、好きなお芝居していて下さい。喜んで待ちます。花崎先輩のために割ける時間なんて、あたしにとってはご褒美です」…………
イルミネーションが光を増す。前方を行き交う人々は、残すところ僅かになってしまった非日常にしがみつこうとでもしているように、もがいている。幻想的なメロディは、鳴り止まない。
今日という一日が終わっても、次に期待すれば良い。水和と重ねるひとときを、次へ、そのまた次へと繋いでいって、いつか永遠になれば良い。
どれだけあかりが支えられたか、水和本人が知る日は来ないにしても、彼女との出逢いに救われた。
