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Melty Life

第2章 初デート



 しかし、千里は子供だった。世間知らずの優等生で在りたがる、独り善がりな子供だった。


 金を出せ。

 イヤならサンドバッグになりやがれ。


 その時の千里の所持金は、荒れくれた中学生を黙らせるには不足なかっただろうに、彼のどちらの要求にも応じなかった。いかがわしいホテルから出てきたところを目撃した事実を咎めて、こんな時間まで私服で街をうろついていた彼を心配する大人のいない境遇を一方的に嘆いて、挙げ句、通りすがりの少年に乱暴しようとしている彼自身に、思いつく限りの非難の言葉をぶつけた。

 千里は自分の頰が濡れていることに気がついた。どうしようもなくやるせなかった。

 少年の奇抜な格好は、世間への単純な反発から来るものではない。千里は直感していたし、また、彼が金を巻き上げる行為に不慣れというのも図星だった。


 自分が最低だと自覚した。何故、自分と同じで孤独な彼と、初めから一緒に泣いてやろうとしなかったのか。いや、一緒に泣いてもらおうとしなかったのか。


 さんざん持論を押しつけて、偏見で彼を傷つけたのに、別れ際、千里は金髪の少年から、突拍子もない宣言を受けた。

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