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Melty Life

第2章 初デート




 …──俺、貴様の学校、受けるわ。

 …──え?

 …──千里、馬鹿だもんな。お前みたいに馬鹿でも通える学校なら、俺も今から勉強すれば、高等部から入れるだろう。



 無理に決まっている。

 どこかで千里は見下していた。


 そんなことより連絡先を交換しておけば良かった。どこに住んでいるのか訊いておけば良かった。
 あとになって、千里も少年と友達になりたかったのだと後悔した。現実は時既に遅し、なすすべもなく、たった一度の友情ごっこをした相手の面影を時折思い出しては、何事もなく半年が過ぎた。まさか、本当に彼が自分を追って、偏差値も学費も高すぎる淡海ヶ藤に入学してくるとは思わなかった。校則違反の金髪のまま。ピアスのまま。


 今年は、どんな新入生が入ってくるのか。

 もう自分の親友のような生徒はごめんだ。何かと責任の重い祖父や、彼の素行に頭を抱えている生徒指導部の教員達に、これ以上苦悩が増えても不憫だ。



パチパチパチパチパチパチ──……



 両隣の拍手の音に、ハッとした。

 千里ら生徒会の面々の並ぶ前方で、緞帳が降りていく。がらんと広い講堂にエンディング曲が響き渡る中、マイクを通した演劇部部長の声が、部員達を紹介していく。

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