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Melty Life

第2章 初デート



「お疲れ様です」

「お疲れ様でーす」


 ステージの幕が再び上がると、本番同様の衣装をつけたキャスト達を含む演劇部員達が、舞台裏からぞろぞろ客席に降りてきた。

 広々した客席は、今は折り畳み椅子が無造作に散らばっているだけだ。

 友情や青春、中でも進路を題材とした演目は、役に扮した部員達も、個性は抑えられ気味だ。
 そんな中、今しがたまで主人公の友人役を務めていた少女が小道具を抱えて姿を見せた瞬間、千里は思わずどこかに隠れたくなった。舞台に彼女がいた時は、特に胸が騒ぐこともなかったのに、目線の高さが近くなった途端にこれだ。他のキャスト達と同じデザインのセーラー服に、ポニーテールに結んだブルーグレーのウェーブヘア。水和がここにいるのは当たり前なのに、千里は、わけもなく後ろめたい気分になった。


「生徒会の皆さん、今日はご観賞、有り難うございました。問題ありませんでしたか」

「こちらこそ、今日は観せてもらって有り難うございます。時間は規定内に収まっていました。訂正が必要な箇所も、俺はなかったと思います。皆は?」

「同じくです。問題ないんじゃないでしょうか」

「うん、年齢規制かかるような単語もなかったし。あ、でも一つ良いですか」

「何か」

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