
Melty Life
第3章 春
人のことは言えないにせよ、ゆうやから見ても、正真正銘、水和はインドア派だ。そういうところは変わらない。
決して受け身ではない、ただ追いもせず拒みもしない、じっとそこに根を張って、来るものを癒やす水辺の花を彷彿とする水和のこういう性質が、ゆうやを強く引き寄せる。
植物園の門を出て、さびれたカラオケ店を通り過ぎた先に美術館の看板が見えてきたところで、つと水和が話題を変えた。
「そう言えば、竹邑くん、モデルとかしてる?」
「っ……」
「ごめん。話したくないなら良いんだ。この間、似た人を雑誌で見て……竹邑くんかなって。まさかね」
「…………」
その、まさかだ。
原則、淡海ヶ藤は生徒のアルバイトを禁じている。特別な事情にのみ許可が下りるから、ゆうやは入学早々その手続きは済ませたが、主な仕事がメンズ向けファッション雑誌というだけあって、クラスメイトの目に触れる可能性は低い。あえて公言しなかったのだが、先日、希宮莢というモデルと共演したふざけた企画は、ゆうやが特別ゲストに招かれた女性向けティーンズ雑誌。水和の系統ではないにしても、彼女の身近な人間が手に取った可能性は高い。
「あのさ、それ……」
「ん?」
「希宮莢って女との、あれ?」
「うん。やっぱり竹邑くん?!」
