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Melty Life

第3章 春



 今日も、隼生は目尻にシワを刻んで、千里の話に相槌を打つ。決して千里を否定しないで、時には共感を込めて眉根を寄せて、そして何とかならないものか……と、たとえ口先だけでも呟いてくれる。


「千里、お前は理花さんが心配するような子じゃないよ。お前はわしの、自慢の孫じゃ。どうだね、例の水和ちゃんとは、また同じクラスになれたか?」

「うん。有り難う、おじいちゃん。でもゆうやと離れたよ」

「ははっ、残念だったのう。若い内は、そういう我慢も経験じゃ。わしも孫のクラスには、あまり口出し出来んからな。言いにくいがの、お前の願いが叶ったのは偶然じゃ。これは恋も叶う日も、近いなぁ」

「それだけで?……ゆうやとも同じになりたかったな」


 生まれて初めての恋愛も、本音で連める友人のことも、千里は祖父にのみ安心して話していた。

 ゆうやのアルバイトの許可申請が通ったのも、校長への祖父の口添えがあったからだ。千里が世間話がてら頼んだ。

 この先、水和と本当に恋人と呼べる関係になれたとする。いつか両親にも紹介して、大学に進んでも、この先も、真面目な交際を続けていけたとする。
 この面倒な来須の家系で、祖父はきっと、変わらず相談相手になってくれるだろう。

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