
Melty Life
第3章 春
ともかがシャギーの入った胸まである黒髪を手櫛で整えながら、疲れた顔をよりふてくされた感じに歪める。鏡を片手に、仕事上がりの前髪も入念にチェックを入れる玲は、それでも完璧な化粧とヘアアイロンが功を奏してか、あれだけ店内を駆け回っていたのが嘘だったかのように、いかにも休日の女子高生といった佇まいだ。ドリンクバーを追加するかと訊ねたら、自分でオーダーをとってきたから不要だと答えが返ってきた。まもなくして、ともかは身嗜みに満足すると、烏龍茶とカルピスソーダを一気に注いで持ってきた。
「ふぅん。眞雪が視察に行ったんだ。いけ好かないね、その竹邑って先輩も」
「でもさぁ、わたしあの人見たことあるんだ。来栖先輩と比べたら、竹邑先輩の方がワイルドでカッコイイかも」
「えっ、ともかああいう人がタイプなの?」
「圏内ではある。玲は、浮いた話聞かないね」
「私は岡崎先輩かなぁ……テニス部が上下関係あんなに厳しくなければ、チョコくらい渡してた」
「ああ、あの先輩もカッコイイよね。ってか美人。え、何、男が好きなのわたしだけ?」
「そんなことないよ。テニス部って女子だけだから。単にあまり交流ない人より、ある程度は知ってる人を、良いなぁって思うのは必然でしょ」
「あかりみたく、ひと目惚れっていうのもあるよ」
