テキストサイズ

Melty Life

第3章 春



 ひと目惚れというのだろうか。

 あかりが水和を知ったのは、受験を控えた中学三年生の初夏、オープンキャンパスの舞台でのことだ。
 水和の華やかな外見に、目を惹かれた。次には言葉の強さに脳天を撃ち抜かれて、気がつけば演劇部の持ち時間の後半は、彼女ばかり目で追っていた。彼女の台詞の一つ一つが、あかりの心臓の一部になっていく感覚だった。
 水和にまた会いたくて淡海ヶ藤を志望して、願い叶って進学したあとはその芝居を何度も観て、やがてあかりは、自分は彼女の精神を糧としているのだと覚った。今年のバレンタインデーは、ただ来須か竹邑が水和を恋人にしてしまうのが嫌で、彼女が誰かの特別になるところを想像すれば寂しくて、衝動的に阻止に出て、衝動的に告白した。本当に意識するようになったのは、多分、初めて隣を並び歩いた、あの日の帰り道だった。


「何だかんだ言って卒業する頃、私達の中で相手いるのは、あかりだけかも知れないな」

「えっ、お先真っ暗?!」

「あんたも、わたしも眞雪も。まず片想いもしてないでしょ」

「……うぅ」

「私は、それでそれで急ぐことないと思ってるよ。これから恋より夢中になれるものあるかもだし、いざその時が来て、興味本位で交際始めちゃってた人がいたら邪魔になることだってあるって、お母さんが言ってた」

「ひゃぁ……眞雪のお母さん、露骨……」


「そう言えば話変わるけど、侑目沢……知香さん?その子どうなったの?」

「ああ、知香ちゃんは……」

ストーリーメニュー

TOPTOPへ