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Melty Life

第3章 春


 隼生が千里に明かした、両親の不仲の口火。理花が歪んだ顚末。

 一人前に恋愛をしているとは言っても、隼生からすれば、千里は子供だ。その千里に事実を告げるのは、辛かっただろうと思う。生涯隠していた方が、不幸は広がらなかったかも知れない。

 事実、千里は父親を恨んだ。

 父親が息子に隠していた昔話は、ドラマや映画で取り上げられる裕福層にはつきもののような顚末だった。

 配偶者を謀って、よその女に、しかも自分の営む会社の社員に身篭らせた。

 理花の発作は、当然の思考と行動だったのだ。

* * * * * * *

 出どころの知れない噂話は、確かに生々しかった。

 あかりが近隣に住む女と金銭的な取引きをしていた。物質的な対価と引き換えに、肉体的な支配に応じていた、それも長期に渡っていたと、生徒達の間で囁かれていた風聞は、掻い摘めばこうした内容だった。


 小声で、口早にあかりに告げると、眞雪は宙に拳を握って唇を噛み、その手を下ろした。近くに低木でもあったら、枝の一本へし折っていた顔つきだ。

 わざわざあかりを校舎裏まで連れ出したのは、噂話を鵜呑みにしている生徒達に、罵詈雑言を散らしたかったからかも知れない。

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