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Melty Life

第3章 春


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 受験に備えた時期の佳境に、処女をなくした。
 そういう時期だったからこそ、夢見がちな少女に倣って、とろけるように甘い行為はいつか出会う大切な相手のために取っておこうという選択肢を、打ち捨てた。

 あかりにとって、淡海ヶ藤高等部への志望が、夢みがちな少女としての最優先事項だった。
 世間体上、学費を渋らなかった両親は、名の知れた進学校を志せるような環境を、あかりに与えなかった。

 小野田があかりを見つけた夜、あかりは彼女のコートにくるまってタクシーを降りると、到着先で、十分な湯の張られた浴槽に浸かった。食べ物を買えるだけの小遣いはあったのに、両親の癇癪で夕餉にもお菓子にもありつけなかった分、初対面の親切な女の手料理は、あかりを人心地につかせた。

 年末年始、あかりは小野田の家に通いつめた。
 会社員が一人で住むには広すぎるのではないかという住居は、三、四度押しかける内に、自宅よりあかりの居場所として馴染んだ。初めは遠慮していたあかりも、同じ町内の小野田が訪ねてくる度、招かれた彼女の自宅で至れり尽くせりされたのだ。
 三学期が始まって、冬休みより家を離れる時間が増えても、小野田はあかりを快く迎えた。

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