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Melty Life

第3章 春



 引っ越してきたばかりで、親しい人間が近くにいなかったから、宮瀬ちゃんが来てくれるようになって楽しいわ。

 …──中学生っていうのには、驚いたかな。暗くて、遠目だったから。こんな歳下の子にこんなこと思うなんて恥ずかしいけど、綺麗でドキッとしちゃったものだから。


 小野田の甘言に他意はないようだった。まるで友人同士が褒め言葉を交わし合う時と変わらない、軽くて無邪気な聞き心地だった。

 そのように解釈していたあかりが、無知だったのか。


 当時は今より長かった黒髪に、小野田は初め、やはり友人同士の戯れのように手櫛を通す程度だった。綺麗な髪ね、羨ましい。勉強に差し支えるほどではなかった。小休憩をとっている間は彼女も会社から持ち帰った仕事に打ち込んでいて、あかりも気にしなかったが、お茶や食事を共にする時、ふと、両親と咲穂ほど仲の良い家族でもありえないような密接した距離に小野田がいることがあった。宮瀬ちゃんって、指は冷える方?と、指と指の間に挟み込まれてくる小野田のそれ。制服姿の女の子って、ちょっとエロティックよね……と、プリーツスカートに覆われた太ももを滑る小野田の手のひら。スキンシップは、日に日に程度を増していった。

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