Melty Life
第3章 春
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微睡んでしまいそうに静かな朝をやり過ごしながら、知香は聴覚を遊ばせていた。
好き好きに分かれた仲良しグループの雑談は、あちこちから重なれば、ざわついた音にしか聞こえない。そのくせ時折、独立した単語が突然、飛び出す。そうまで声を張り上げる必要があるのかと疑問視するほど、特に土日明けの高校生は、元気だ。
「全校朝礼、中学から思えば楽になったよね。毎週月曜はダルかったー。咲穂が仮病使ってたせいで、ウチらが立ちっぱだったんだよ」
「えへっ、バレてた?皆も貧血起こせば良かったじゃん。先生なんて、ちょっとしおらしくしてうずくまったらちょろいのに」
「咲穂は可愛いから。私らには無理無理。ま、これからは仮病どころじゃないだろーね」
「来須先輩の生徒会代表スピーチ聞かなくちゃいけないもんね。咲穂が面食いなのは知ってたけど、やっぱあのくらいのレベルじゃないとダメだったかぁ」
「やめてよ。本気じゃないし。インテリのくせして目立つ生意気男に、興味向けてやってるだけだし」
生徒間の迫害が陰険なのは中学生がピークだと、何かのドラマで聞いたことがある。フィクションも侮れない。
咲穂の率いるグループは、底辺にいる女子生徒になど、日に日に構わなくなっていた。すれ違いざまに暴言を吐くだとか、足を踏むだとか、手軽な嫌がらせこそ健在にしても、最近の彼女らの興味は、知香より、もっぱら生徒会長にあるらしい。