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数珠つなぎ

第9章 俺たちは歩いていく

【智side】


出来上がった形だけのフィギアを並べ、その中の1個を手に持った。


君は……どんな顔してるんだ?


ジッと見つめていると、自然に表情が浮かび上がってくる。

その記憶を忘れないうちに、パレットに絵具を出すと筆を走らせた。


形だけだったフィギアに命を吹き込んでいく。


「出来た」

マジマジとフィギアを見つめていると、俺の身体が温かさに包まれた。

「終わった?」

「うん」

首元に顔を埋める和也の髪を撫でた。

「それにしても……たくさん作ったね」

作業場には出来上がった作品が至る所に散乱している。

「あのさ……」

「ん?」

俺の色声で何かを察したのか、和也は俺の隣の椅子に座った。

「だいぶ作品が増えたでしょ?」

「そうだ。ねフィギアだけじゃなく、絵とかオブジェも作るようになったからね」

「だから……近くに部屋を借りようかと思うんだ」

ジッと和也を見つめ、返事を待つ。

「いいと思うよ」

ニッコリと笑って賛成してくれた。


和也は俺が『何かしたい』という事に反対することは無い。

迷っている時も必ず背中を押してくれる。


「あのお金、使ってもいいかな?」

「毎回、俺の許可貰わなくてもいいでしょ?智の」


ネットに作品をアップして販売を……って、それは俺じゃなく和也がしてくれているんだけど、まだまだ利益は少ない。


寧ろ材料費などでマイナスになる時もあって、自分の稼ぎだけではまだまだ食べていけない。


それでも俺は……やりたいんだ。

挑戦、してみたいんだ。


壁に貼っている一枚の手紙を見つめた。

そこに書いてある『ありがとう』という文字。


俺の『身体』じゃなくて、俺が『作ったもの』で誰かが笑顔になるなら俺は頑張れる。


「部屋が片付いたら、もっと大きなものを作ろうと思うんだ」


どんどん次の目標が出来る。

きっと目標を達成する楽しさを知ったから。


俺は机の引き出しを開け、通帳を取り出した。

記帳履歴は引き出しと入金の繰り返し。



いつか必ず元の金額に戻す。

そして倍以上にしてやる。


だから……見てろよ。


「ご飯、食べに行こ?」

「うん」

俺は通帳を引き出しに戻し、和也の手を取って歩き出した。

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