数珠つなぎ
第9章 俺たちは歩いていく
『桂花楼』を復活させたい。
そう思って最初にした事は、麻婆豆腐を作る事。
これだけは父ちゃんが『美味い』と言ってくれた料理。
やりたい事が見つかって……
やりたい事をしているのに……
あの時みたいに、全然楽しくない。
「どうしたんだい?」
振り返るとマスターがカウンターの奥に立っていた。
「いえ……」
こちらに近づくと、俺の後ろから出来上がった料理を見つめる。
「美味そうじゃないか」
作った人からすれば嬉しい言葉なのに、ちっとも喜べない。
「ちょっと……話さないかい?」
「えっ?」
ニッコリと笑っているけど、俺に有無を言わせない目力を感じた。
カウンターに座るマスターの隣に俺も座る。
「まだ……許せないかい?」
マスターには一連の出来事を話している。
俺は櫻井を……櫻井と呼ぶヤツを許せる?
俺は櫻井を……櫻井と呼ぶヤツを許せない?
「わかりません」
あんな形ですべてが終わってしまった。
何も消化できないまま……
「もし恨む相手がいなければ、雅紀くんの両親は死ななかったかもしれない」
そうだ。
アイツが父ちゃんと母ちゃんを騙さなければ……
「でも、智くんと和也くんは救えなかった」
「えっ?」
「潤くんとも……今みたいに一緒にいたかな?」
潤が……そばにいない。
智と和也を……救えない。
そんな事、考えもしなかった。
憔悴しきっていた俺を一人に出来ないと、ずっとそばにいてくれた潤。
復讐のために潜入したアイツの店で出会った智と和也。
「悲しいが……今の出会いがあるのも、君が恨む相手がいたからだよ」
アイツが……いたから?
「君たちを繋いでいるのは……誰だい?」
俺たちを繋いでいるモノ?
「雅紀くんは優しい人だ。きっと変わることができる」
ニッコリと俺を見て頬笑むマスター。
その笑顔がなぜか、両親の笑顔とダブって見えて……
涙が勝手に溢れてきた。
「相手を恨むんじゃなくて……な?」
その答えは教えてくれなかった。
次の日から俺は答えを見つける為に向き合った。
ずっと逃げていた過去から……
潤も智も和也も一緒に向き合ってくれた。
少しずつ自分の中で、何かが変わって行った。
そう思って最初にした事は、麻婆豆腐を作る事。
これだけは父ちゃんが『美味い』と言ってくれた料理。
やりたい事が見つかって……
やりたい事をしているのに……
あの時みたいに、全然楽しくない。
「どうしたんだい?」
振り返るとマスターがカウンターの奥に立っていた。
「いえ……」
こちらに近づくと、俺の後ろから出来上がった料理を見つめる。
「美味そうじゃないか」
作った人からすれば嬉しい言葉なのに、ちっとも喜べない。
「ちょっと……話さないかい?」
「えっ?」
ニッコリと笑っているけど、俺に有無を言わせない目力を感じた。
カウンターに座るマスターの隣に俺も座る。
「まだ……許せないかい?」
マスターには一連の出来事を話している。
俺は櫻井を……櫻井と呼ぶヤツを許せる?
俺は櫻井を……櫻井と呼ぶヤツを許せない?
「わかりません」
あんな形ですべてが終わってしまった。
何も消化できないまま……
「もし恨む相手がいなければ、雅紀くんの両親は死ななかったかもしれない」
そうだ。
アイツが父ちゃんと母ちゃんを騙さなければ……
「でも、智くんと和也くんは救えなかった」
「えっ?」
「潤くんとも……今みたいに一緒にいたかな?」
潤が……そばにいない。
智と和也を……救えない。
そんな事、考えもしなかった。
憔悴しきっていた俺を一人に出来ないと、ずっとそばにいてくれた潤。
復讐のために潜入したアイツの店で出会った智と和也。
「悲しいが……今の出会いがあるのも、君が恨む相手がいたからだよ」
アイツが……いたから?
「君たちを繋いでいるのは……誰だい?」
俺たちを繋いでいるモノ?
「雅紀くんは優しい人だ。きっと変わることができる」
ニッコリと俺を見て頬笑むマスター。
その笑顔がなぜか、両親の笑顔とダブって見えて……
涙が勝手に溢れてきた。
「相手を恨むんじゃなくて……な?」
その答えは教えてくれなかった。
次の日から俺は答えを見つける為に向き合った。
ずっと逃げていた過去から……
潤も智も和也も一緒に向き合ってくれた。
少しずつ自分の中で、何かが変わって行った。