数珠つなぎ
第4章 あなたたちを助けたい
「……ただいま」
久しぶりに帰ってきた家のソファーに深く腰かける。
こんなに身体を預けて座ったのは何日ぶりだろう?
毎日が慌ただしくて、記憶があまりない。
感情も置いてけぼりで、泣いたり悲しくなることも無かった。
淡々と葬儀、通夜、初七日、四十九日を待たずに納骨まで行った。
永代供養墓に両親と兄ちゃんを納骨した。
墓を建てるお金など学生の俺には無かった。
せめて四十九日までは実家で供養したかったが、
なぜか土地は既に人手に渡っていた。
俺の周りから何もかもが消えていく。
あるのは自宅から持ち帰った、箱が一つ。
箱を開けると中には思い出がたくさん詰まったアルバム。
どこを捲っても家族がニコニコ笑ってる。
その笑顔はもう過去のモノ。
見ることはもうできない。
「雅紀」
いつの間には潤が俺の隣に座っていた。
「ねぇ、潤もいなくなるの?潤も、俺の前から消えちゃうの?」
すると潤は俺の手を取り、頬に当てた。
「ちゃんと俺に触れてるでしょ?ちゃんと俺の体温、感じるでしょ?俺はここにいる……俺は消えない。雅紀のそばから絶対に離れない」
ストッパーが外れたかのように、目から涙が溢れた。
視野がぼやけて潤の顔が見えなくて、また不安に襲われる。
「潤…っ、じゅ…んっ」
必死に潤の名前を呼ぶ。
潤の存在を確かめるように……
「俺はここにいるよ」
ギュッと俺を抱きしめてくれた。
言葉だけじゃなく身体全体で潤の存在を感じた。
「ずっ…と、そば…に、いて…」
必死に言葉を絞り出した後、俺は意識を手放した。
ふと、身体を包んでいた温もりがなくなった。
「いやっ、行かないで……」
パッと目を開けると潤が俺の顔を覗き込んでいた。
「ゴメン。起こしちゃったね」
起こしていた上半身をベッドに戻して、ギュッと横から抱きしめてくれた。
「雅紀……実は見せたいものがあるんだ」
潤は俺を抱きしめたまま後ろを向き、ベッドサイドチェストの引き出しを開ると1枚の封筒を取り出した。