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数珠つなぎ

第4章 あなたたちを助けたい

実際の手紙にはここまで詳細に自殺に至る経緯は書いていなかった。

自分たちが人を憎む前に死んだように、俺に対しても人を憎むことなく生きて欲しいと願っていたんだと思う。


ごめん……

俺はそんなに優しい人間じゃないよ。


そんな俺に父ちゃんや母ちゃんが残してくれたもの。


それは生命保険の保険金。

大学の授業料を支払うには十分すぎる金額だった。


きっと『将来のために使え』って残してくれたもの。


でも俺は初めて家族に反抗した。


そのお金を使って、金融会社や親父を裏切ったヤツを見つけるために探偵に依頼して調べてもらった。

その目的の為に俺は金に糸目はつけなかった。



父ちゃんも母ちゃんも……

手掛かりをゴミ箱に捨てるなんて、詰めが甘いよ?



潤があの日、手紙と一緒に渡してくれたもの。


それは破られていたものをセロハンテープで復元した借用書と1枚の写真。


潤も渡すかどうか迷ったと今になっては思う。


それを俺に渡すという事は、両親そして兄ちゃん自殺に追い込んだヤツの情報を与えることになる。


そして何より、恋人を復讐に駆り立てる事になる。

でも潤はそうせざるを得なかった。



生きる理由を作らなければ、俺が死ぬから……



俺は切望の縁から生きる理由を見つけた。

もちろん大学を卒業するという最低限の両親の願いは叶えたが、それを将来に生かすことは出来なかった。


俺は復讐にすべてを費やした。


潤もそんな俺を止めること無く、逆に協力してくれた。


けどお金だけはあっという間に底を尽き、初めて潤が『もう復讐は止めよう』って俺に言った。

探偵もヤツの足取りを追うの苦労していた。

簡単に調べる事ができない人物なんて絶対に危険に決まっている。


俺だってわかっていた。

でもあと少し手を伸ばせば復讐相手に辿りつくはず。


ここまできて、諦めるなんて出来ない。


復讐を止めたら、俺に何が残る?


振り返っても歩んできた道はない。

引き返すことなんて出来なかった。

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