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数珠つなぎ

第4章 あなたたちを助けたい

指か勝手に震える。


何をビビってるんだ!

ようやく……ようやくアイツと対峙できるだ。


その場で立ち尽くしていると、カチャっとドアロックが解除される音が響く。

『相葉くんだよね?入って』

そしてインターフォンから俺を招き入れる声。

俺は大きく深呼吸すると、ドアノブを回した。

中に入ると受付らしき場所にあるソファーに写真でしか見た事のないアイツが座っていた。

俺の姿を確認するとスッと立ち上がり、ゆっくりとこちらに近づいてくる。


もの凄い目力を放ち、頭からつま先、さらには脳の中までも見透かされてるような気がした。


そして感情の入ってない笑顔を前に、背筋に冷たいものが走る。


「初めまして、ここのオーナーの櫻井です」

「今日からお世話になります相葉です。よろしくお願いします」

深々と頭を下げると同時に、なんとか気持ちを切り替えようとした。


落ち着け……落ち着くんだ。


「そんなに固くならないで。ほら、頭をあげて?」

「はい」

上げた瞬間、アイツの顔が目の前に。

「ふふっ、思った通り。可愛い顔……してる」

「……えっ?」

言葉を発したと同時に顎をグッと掴まれた。

「受付も容姿は大事だからね?あっ、もし接客に興味が出たら言って?大歓迎だから」

ツーっと指が顎から頬へと伝い離れていった。

「いえ、俺は……」

アイツのペースに飲み込まれて、身動きが取れない。


早く、二宮に会いたいのに……


「じゃあ早速……初仕事をお願いするね」

「は…い」

まだ営業時間前なのに、何の仕事なんだ?


嫌な予感がした。


すると一枚の紙を俺に差し出す。

「店の見取り図。お客様の案内がメインだから覚えてね」


俺にとっては耐えられない仕事。

櫻井の金儲けの手助けをするんだから。


けど最初に指示された仕事は、聞くに耐えられない内容だった。


笑顔で俺に説明をし始める櫻井をただただ見つめる。


俺は無力な人間だ。

寧ろ、不幸な人間を増やすだけの存在じゃないのか?


二宮が自由でいられる時間のカウントダウンはZEROを示そうとしていた。

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