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数珠つなぎ

第8章 僕らは認めない

潤が俺たちに手を振ると、足早にこっちに向かってくる。

「何してるの?」

「んー、何となく……ね?」

智を見つめるとウンウンと頷く。

「実は俺たちもなんだ」

そう言って雅紀は俺の隣に座ると、潤もその隣に腰かける。


俺たちの様にビルを見上げる2人。

今、2人はどんな思いなんだろうか。


初めて客に抱かれた日、2人は俺たちに全てを打ち明けてくれた。


雅紀の家族に起こったこと。

潤がなぜここで働いているのか。


そして櫻井翔との繋がり。


雅紀はずっと泣いていた。

『ごめんごめん』って……


その言葉は俺に対してでもあるし、きっと潤に対してでもあったと思う。


自分のせいで巻き込んでしまったこと。

そして止めることが出来なかった自分を責めている。


それは智も同じ。

きっと自分自身を許せないでいる。


「みんな……本当にごめんね」

久しぶりに聞いた雅紀の謝罪の言葉。

「俺のせいで辛かったでしょ?俺が巻き込みさえしなければ……」

「もういいって」

涙目で俺たちを見つめるから、潤が苦笑いをしつつ雅紀の髪を優しく撫でた。

きっと潤はこんな場面をずっと見てきたんだ。

「俺は雅紀のせいだなんてこれっぽっちも思ってない。もちろん、智もね?」

急に自分の名前を呼ばれてビックリする智。


ずっと笑って誤魔化して伝えてなかった自分の気持ち。


最後はちゃんと伝えなきゃ。



潤の分まで……



「俺が決めたこと。それは雅紀や潤がいなくても同じ」

雅紀が何か言いたげな顔をしているけど、俺は言葉を止めない。

「雅紀はちゃんと止めてくれた。けど、俺の気持ちは変わらなかった」

「でももし俺が……」

「止めても変わらない」

智の言葉を強い口調で遮った。


俺は何よりも、智を救いたいと思って決断したんだ。


でも結局、俺一人では何も出来なかった。


「でもね、雅紀と潤がいなかったら俺たちはこの道から抜け出せなかった」

俺は立ち上がると、雅紀と潤の前に立って頭を下げた。


「俺を……智を救ってくれてありがとう」

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