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数珠つなぎ

第8章 僕らは認めない

その声に振り返ると、数人の女性が後ろを何度も振り返りながらビルから走って出てきた。


と言うより、逃げてきたという表現が正しいかもしれない。


俺たちは立ち止まって、その様子を見ていた。

「何かあったのかな?」

心配そうに雅紀が見つめる。


何か……嫌な予感がする。


騒ぎを聞きつけビルの前に集まっていた野次馬が、誰かを出迎えるように後退りしながら道を開けてた。

その先にゆっくりと歩く人影。

俯いたままで足元は覚束ない。

「おい、誰か救急車!」

「違う、警察だっ!」

その声にバッと顔を上げ、周りにいる野次馬を睨んだ。

その形相にササっとさらに後退りする野次馬。

「ねぇ、あれ……誰かに似てない?」

和也が確かめるように目を細めて見つめる。

「風磨に……似てない?」

智がポツリと呟いた瞬間、俺はそいつと目が合った。


だって風磨はあんな髪型じゃないし、髪色だってシルバーアッシュだった。


でも何でだろう?

ふと、思ったんだ。


俺の髪型に似てるって……


そんな事を考えている間も、そいつは俺から目を離さない。

立ち止まってジッと俺を睨みつける。


「潤、ヤバいよ。逃げよ?」

雅紀が動かない俺をユサユサと揺らす。


けど、俺は動けなかった。

動いちゃいけないって思った。


そしてゆっくりと俺に近づいてくる。


「風…磨だよな」

名前を呼ぶと、俺の前で立ち止まった。

ただならぬ雰囲気を感じたのか、雅紀が俺の前に立って盾になる。

「邪魔だ、どけっ!」

「うわ…っ」

怒号と共に、雅紀を横に突き飛ばした。

でも、智と和也が雅紀を受け止めてくれた。

「お前さえ……お前らさえいなければ、俺は……俺は……」

風磨の頬に涙が伝う。

そしてグッと唇を噛むと、俺の胸倉を掴んで引き寄せる。


その瞬間、ふわりと鼻に届いた鉄っぽい臭い。


「……血?」

目線を下げた先にある俺の襟元と胸倉を掴む風磨の手は赤く染まっていた。


これは……誰の血だ?


まさか……違うよな?

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