数珠つなぎ
第8章 僕らは認めない
【雅紀side】
「……血?」という潤の言葉に目線を向けると、胸倉を掴む風磨くんの手と袖口を染める赤い染み。
そして突き飛ばされた時に触れた俺の二の腕あたりにも同じような赤い染み。
まさか……そんなはずはない。
よろけた身体を支えてくれた智と和也の腕を振り払い、潤の胸倉にある風磨くんの手を掴んだ。
「その血……まさか、違うよね?」
その瞬間、潤の胸倉を掴んでいた腕はダラっと垂れ下がる。
怒りの宿っていた目は、流れ落ちた涙によって消火されたようにその灯りを失った。
「違う……俺じゃない……俺じゃない!」
髪を乱暴に掻きむしりながら叫ぶ。
「答えろ!この血は……誰の血なんだよ!」
両肩を掴んで何度も風磨を揺さぶった。
「雅紀…っ、落ち着いて」
和也の慌てた声が聞こえる。
周りのザワついた声も聞こえるけど、確かめずにはいられなかった。
違うよな?
櫻井の血じゃ……ないよな?
「翔さん、翔さんっ!どこ?どこにいるの?」
パッと顔を上げると辺りを見回す。
「どうしよう……翔さん、翔さんっ!」
「おい…っ、何があったんだ!答えろっ!」
胸倉を掴んで俺の方を向かせた。
「お願い……翔さんを……たすけ…て」
その言葉を聞いた瞬間、風磨は力なく膝から地面に崩れ落ちていった。
ピリリリリッ…
鳴り響く火災報知機。
俺たちに向いていた野次馬の目は一斉に音の方に変わった。
音の出所は風磨くんが出てきた場所。
つまりは……俺たちの働いているビル。
そしてその入り口から続々と、たくさんの人が逃げように出てくる。
「何?火事?どこからの?」
逃げ出した人々が口にしている言葉。
見上げるビルには炎の気配も、煙さえ立ち込める気配がない。
燃えているのは、だぶん……地下。
つまりは、俺たちが働いている店。
「……櫻井はどこ?」
へたり込む風磨くんに問いかけると、後ろを振り返り何も言わずビルを指差した。
くそ…っ!
逃げるなんて絶対に許さない。
俺は逃げてきた人や野次馬を掻き分け、ビルの地下へと階段を駆け下りた。
「……血?」という潤の言葉に目線を向けると、胸倉を掴む風磨くんの手と袖口を染める赤い染み。
そして突き飛ばされた時に触れた俺の二の腕あたりにも同じような赤い染み。
まさか……そんなはずはない。
よろけた身体を支えてくれた智と和也の腕を振り払い、潤の胸倉にある風磨くんの手を掴んだ。
「その血……まさか、違うよね?」
その瞬間、潤の胸倉を掴んでいた腕はダラっと垂れ下がる。
怒りの宿っていた目は、流れ落ちた涙によって消火されたようにその灯りを失った。
「違う……俺じゃない……俺じゃない!」
髪を乱暴に掻きむしりながら叫ぶ。
「答えろ!この血は……誰の血なんだよ!」
両肩を掴んで何度も風磨を揺さぶった。
「雅紀…っ、落ち着いて」
和也の慌てた声が聞こえる。
周りのザワついた声も聞こえるけど、確かめずにはいられなかった。
違うよな?
櫻井の血じゃ……ないよな?
「翔さん、翔さんっ!どこ?どこにいるの?」
パッと顔を上げると辺りを見回す。
「どうしよう……翔さん、翔さんっ!」
「おい…っ、何があったんだ!答えろっ!」
胸倉を掴んで俺の方を向かせた。
「お願い……翔さんを……たすけ…て」
その言葉を聞いた瞬間、風磨は力なく膝から地面に崩れ落ちていった。
ピリリリリッ…
鳴り響く火災報知機。
俺たちに向いていた野次馬の目は一斉に音の方に変わった。
音の出所は風磨くんが出てきた場所。
つまりは……俺たちの働いているビル。
そしてその入り口から続々と、たくさんの人が逃げように出てくる。
「何?火事?どこからの?」
逃げ出した人々が口にしている言葉。
見上げるビルには炎の気配も、煙さえ立ち込める気配がない。
燃えているのは、だぶん……地下。
つまりは、俺たちが働いている店。
「……櫻井はどこ?」
へたり込む風磨くんに問いかけると、後ろを振り返り何も言わずビルを指差した。
くそ…っ!
逃げるなんて絶対に許さない。
俺は逃げてきた人や野次馬を掻き分け、ビルの地下へと階段を駆け下りた。