数珠つなぎ
第8章 僕らは認めない
【雅紀side】
全員が話を始めるのを固唾を呑んで待つ。
緊張からかまた溜め息が漏れる。
沈黙が怖い。
ジッとしてられない。
俺は再びアイスコーヒーを飲んだ。
「昨日の火事で1名のご遺体が発見されました」
ガツンと耳から脳へと伝わる言葉に視界が歪んだ。
「大丈夫?」
潤の優しい声と俺の手を包む温かさが俺の意識を呼び戻してくれた。
「う…ん」
俺はゆっくりと深呼吸して気持ちを落ち着かせた。
「ただ……」
その後の言葉が続かない。
目線が揺れ、瞬きを何度も繰り返す。
その行動は言葉を選んでいるというか、迷うっている様に見える。
「全て……教えてください」
皆の気持ちを潤が代弁してくれた。
でも、いったい何を躊躇しているんだ?
『櫻井が死んだ』
この事実以外に……何がある?
「ご遺体は目視では性別すら識別できない状態でした」
あの火事の中にいたんだから仕方ない。
「その為、歯の治療痕から身元を割り出しました」
まるで刑事ドラマのようなセリフ。
こんな事って実際にあるんだな。
でも何でそんな遠回しに話をするんだ?
身元なんて、わかりきってる。
「私たちも張り込みをしていて、櫻井が店にいたのは間違いないのですが……」
歯切れの悪い言葉でまた止まる。
そしてまた訪れた沈黙。
何より強制捜査に向けて張り込んでいた刑事さんが櫻井がそこにいた事を誰よりも知っているはず。
『櫻井翔』と言えばいいだけだろ?
「あの……大丈夫ですから……はっきり言って下さい」
俺が言わないと進まない。
きっと皆は気を使って言えないはず。
「ご遺体は……御村託也さんと判明しました」
えっ?
『櫻井翔』という名前が聞こえなかった。
耳が……脳が……身体が……
拒否しているのか?
「あの……もう一度、いいですか?」
和也の声が少し震えていた。
皆の目線が一点に集まる。
「ご遺体は御村託也さんです」
ハッキリと初めて聞く名前が耳に届いた。
全員が話を始めるのを固唾を呑んで待つ。
緊張からかまた溜め息が漏れる。
沈黙が怖い。
ジッとしてられない。
俺は再びアイスコーヒーを飲んだ。
「昨日の火事で1名のご遺体が発見されました」
ガツンと耳から脳へと伝わる言葉に視界が歪んだ。
「大丈夫?」
潤の優しい声と俺の手を包む温かさが俺の意識を呼び戻してくれた。
「う…ん」
俺はゆっくりと深呼吸して気持ちを落ち着かせた。
「ただ……」
その後の言葉が続かない。
目線が揺れ、瞬きを何度も繰り返す。
その行動は言葉を選んでいるというか、迷うっている様に見える。
「全て……教えてください」
皆の気持ちを潤が代弁してくれた。
でも、いったい何を躊躇しているんだ?
『櫻井が死んだ』
この事実以外に……何がある?
「ご遺体は目視では性別すら識別できない状態でした」
あの火事の中にいたんだから仕方ない。
「その為、歯の治療痕から身元を割り出しました」
まるで刑事ドラマのようなセリフ。
こんな事って実際にあるんだな。
でも何でそんな遠回しに話をするんだ?
身元なんて、わかりきってる。
「私たちも張り込みをしていて、櫻井が店にいたのは間違いないのですが……」
歯切れの悪い言葉でまた止まる。
そしてまた訪れた沈黙。
何より強制捜査に向けて張り込んでいた刑事さんが櫻井がそこにいた事を誰よりも知っているはず。
『櫻井翔』と言えばいいだけだろ?
「あの……大丈夫ですから……はっきり言って下さい」
俺が言わないと進まない。
きっと皆は気を使って言えないはず。
「ご遺体は……御村託也さんと判明しました」
えっ?
『櫻井翔』という名前が聞こえなかった。
耳が……脳が……身体が……
拒否しているのか?
「あの……もう一度、いいですか?」
和也の声が少し震えていた。
皆の目線が一点に集まる。
「ご遺体は御村託也さんです」
ハッキリと初めて聞く名前が耳に届いた。