テキストサイズ

ぼっち─選択はあなたに─

第16章 休憩タイム

「……っ……」

 瞬間、ある出来事がフラッシュバックした。

 昔小さな町の教会で見習いシスターをしていたユズリノは、若い牧師にしつこく言い寄られていた。それを信頼していたシスターに相談したところ、逆に嫉妬され、他のシスターからも嫌がらせを受けてしまった。

 そんな辛い過去を思い出したユズリノは、今にも泣きそうな表情で体を震わせる。

「あぁ、やはりあなたは深い悲しみを背負っているのですね。私は最初からわかっていました。だからあなたに声をかけたのです」

「……やめてっ……」

「さあ、私と一緒に神に祈りましょう。あなたの罪を告白し、神の赦しを受けるまでひたすら祈るのです。そうすればあなたは……ひっ!」

 突然、牧師が小さく悲鳴をあげた。
 ユズリノの背後にある何かの存在を目にすると、牧師の顔はみるみるうちに怯えた表情になった。

「?」

 ユズリノは不思議に思い、後ろを振り返る。

「…アズサ?」

 ユズリノの背後に立っていたのはアズサだった。しかしさっきとどこか雰囲気が違う。よく見ると、アズサの体の周りを黒いもやが纏っているように見えた。それは蛇の形のようにも見える。

 気づけば牧師は目の前から居なくなっていた。


ストーリーメニュー

TOPTOPへ