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ぼっち─選択はあなたに─

第18章 バトルトーナメント【6回戦】

 歌い終わると、ユズリノはメキユに駆け寄った。そして素手で薔薇のツルを剥がそうとした。

「…っ!」

 案の定、指にトゲが刺さる。
 ユズリノは顔をしかめるが、それでも手を止めなかった。

『なぜだ……なぜ娘を助けようとする? 呪いをかけたのは自分ではないか!』

 ユズリノの不可解な行動を見て、メキユの父親が疑問を投げかける。

「……私も自分を見失ってたのよ。私もずっと一人だったから……」

『!』

「人の心は弱くて脆い……でも信じる心があれば何倍も強くなる」

 ユズリノはそっと右耳のリングピアスに触れた。

「だから、あなたも娘を信じるべきよ」

『…っ!』

「あなたの娘は、あなたが居なくても私に勇敢に立ち向かってきたわ。もう守られるだけの存在じゃないの。彼女は自分の足で自分の人生を歩もうとしているのよ。だからあなたがするべきことは、彼女が迷わないように導いてあげること」

 ユズリノがそう諭すと、薔薇のツルの隙間からメキユの手が伸びてきた。

「……父ぢゃんっ……」

『メキユ!!』

「父ちゃん、おら本当はっ……母ちゃんのようにいつも笑って、父ちゃんのようにかっこいい料理人になりたかっただっ……」

『!!』


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