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「冗談じゃねぇぜ！ じゃあザッハはモンブラン城がどんな状態か知ってて、俺たちに調査しに行かせたのかよ！」

　バットが怒りに任せて、木の幹を拳で叩く。
　木の枝に止まっていた一羽のカラスがバサバサと飛び立った。

「こんなのっ……無駄死にじゃねえか！」

　シャドーに襲われて死んでいった仲間たちのことを思うと胸が痛い。

「殿下、バーム教団の信者のことですが……」

　怒りと悲しみに暮れる二人を横目に、ヤクモは次の話を切り出す。

「先日、マナミと名乗る少女がバーム教団に入団しました」
「マナミ？」
「はい、どうやらその者は異世界から来たようです」
「！」

　異世界と聞いて、ヒカルはドキッとする。

「異世界って……まさか私と同じ日本から？」
「わかりませんが、身なりはヒカル様と似ていました」
「……っ……」

(名前がマナミだなんて、日本人っぽい。もしかしたら私と同じようにこの世界に転生したのかも……。だったら会ってみたい。会って話をしたい)

「わかった、引き続き調査を頼む」

　リュージンがそう言うと、ヤクモは「御意」と短く返事をし、忍者のように木の枝へと飛び乗った。
　ヒカルがヤクモの身体能力にポカンとしていると、

「さて……君たちにはモンブラン城の秘密を話しておかなければいけないよね」

　リュージンが切ない表情を浮かべて言った。