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ぼっち─選択はあなたに─

第26章 黒い犬【選択8】

「なんでお前はそういう時だけお喋りなんだよ」

 そう言いながらリュージンは照れる。

「殿下に代わりまして、ヒカル様のことは私ヤクモがお守り致します」
「は、はいっ……よろしくお願いします」

 なんだか二人の会話から、少しだけヤクモがどんな人物かわかった気がした。
 それにリュージンが信頼するヤクモが護衛をしてくれるのなら、とても心強い。

「大丈夫だよ、ヒカル。そのエメラルドの石が君を守ってくれる」
「……」

 石の力なのか、神の子としての力なのかはわからないけれど、ヒカルはリュージンの言葉に頷いた。

「ではヒカル様、何かあれば私の名をお呼びください」

 そう言うとヤクモは二階の窓から飛び降りた。

「じゃあ、ヒカル……」
「うん、またね、リュージン」

 そう言って部屋から出ようとした時、ヒカルは後ろからリュージンに抱きしめられた。

「えっ……」
「──ごめん、少しだけ」
「……っ……」

 まさか二度も抱きしめられるなんて──リュージンの行為にヒカルは戸惑った。
 しかし嫌な気持ちはない。
 リュージンに抱きしめられると、不安な気持ちが消えていくのを感じた。

「じゃあ、また」
「……うん」

 なんだか恥ずかしくて顔を見れない。
 ヒカルはリュージンがどんな顔をしているかもよくわからず、部屋を出た。


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