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ぼっち─選択はあなたに─

第26章 黒い犬【選択8】

(まだ心臓がドキドキしてるっ……)

 ヒカルは討伐隊本部の建物から出ると、動揺したまま駆け出した。

「はあはあっ……あっ!」

 案の定、曲がり角で白いローブを着ている人物とぶつかってしまう。

「ご、ごめんなさいっ……大丈夫ですか!?」

 慌てて謝りながらその人物を見ると、白いフードから眼鏡をかけた若い女性の顔がチラリと見えた。

「大丈夫ですよ。あなたもお怪我はないですか?」

 眼鏡をかけた女性はニッコリ微笑む。
 
「あ、ありがとうございますっ……大丈夫です!」

 ヒカルは慌てて答えると、その女性に頭を下げて再び歩き出した。

(危ない危ないっ……ちゃんと前見て歩かなきゃ)

 ヒカルは深呼吸をして、町の様子を見渡した。
 収穫祭は終わってしまったけど、ソルトの町は変わらず賑やかだ。

「ふう……」

 この町に来て色々あったけど、青い空と人々の笑顔を見ていると、あの夢もただの夢なんじゃないかと思えてきた。
 もしかしたら不安な気持ちが夢に表れてしまったのかもしれない。

(これからどうするか、ナツミさんと話さなきゃ)

 そうだ。逃げてばかりじゃだめだ。
 誰かに頼るんじゃなくて、ちゃんと神の子同士で話し合わないと──。

 そう決心をしてレイナの宿屋に戻ると、ナツミの姿はなかった。


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